令和6年度補正予算が2024年12月17日に可決され、併せて中小企業対策の予算案および補助金についても各種資料が公開されました。
中小企業対策の予算については、中小企業庁の「中小企業対策関連予算」ページにて情報が網羅されており、各種補助金制度のリーフレットなども公表されています。
本記事では、昨年までの補助金から2025年の補助金で、どのような点で変更が見られるのかについて解説。
また、そこに国のどのような狙いがあるのかを分析することで、2025年の補助金に対して取り組むべきスタンスについても考えていきます。
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目次
中小企業庁が中小企業・小規模事業者向けの令和6年度補正予算のポイントとしてまとめたのが、以下の5つの項目になります。
(出典:経済産業省)
背景にあるのは、昨今の物価高や構造的な人手不足など、中小企業・小規模事業者が直面している厳しい経営環境です。
これを克服するには、何よりも「稼ぐ力」を強化することが重要と位置付け、それを支援するための政策手段が立案されました。
予算・税・制度等の政策手段を総動員して支援する形となっており、「賃上げ原資の確保」と「持続的な賃上げ」につなげることを目指しています。
上記の5項目のうち、補助金制度としてとくに重要になってくるのが、「1.持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援」の存在です。
中小企業・小規模事業者向け経済対策・補正予算として総額5,600億円、既存基金の活用等を含め1兆円を上回る規模となっており、これに基づくさまざまな補助金が予定されています。
(出典:経済産業省)
持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援という大きな枠組みのうち、実際に多くの中小企業が活用できるようになるのが、以下の主要な補助金制度になります。
現状ではまだ詳細は発表されていませんが、それぞれ以下のような方向性になると推測できます。
「ものづくり補助金」は2025年も継続する旨が明記されましたが、公募回数およびスケジュールは現時点では不明となっています。私共経営ビューイングの経験に基づく予想としては、2025年1月下旬に公募開始となり早期の3月上旬前後の公募締切を想定しております。年に何回の公募が実施されるのか等、とても気になるところです。
この点については、情報が明らかになり次第、当社からも随時発信していきます。
(出典:経済産業省)
これまでとのおもな変更点のひとつが、従業員規模による補助金上限の引上です。
21名超の企業は最大2,500万円、51名超の企業は最大3,500万円まで補助金上限が引き上げられる計画となっています。
小規模事業者よりも、ある程度の規模の中小企業がより成長することを後押しする意図が伺えます。
収益納付とは、利益が大きく出た場合に限って補助金を返納する仕組みのことです。
この仕組みのために、従来は補助金を受給しても補助事業の成長を一定に抑えるといった動きもあり、補助金制度が中小企業の大きな躍進につながりにくいという弊害も一部で生み出していました。
2025年実施公募からはこの収益納付が不要になり、補助事業で大きな利益が出れば、それをさらなる成長へと注ぐことができるようになります。
これにより、ものづくり補助金は、より中小企業の成長を加速させるための補助金という性格が強くなると見込まれます。
補正予算の根底にある「賃上げ原資の確保」もまた、収益納付が不要になる背景にあると言えるでしょう。
同じく補正予算の根底にある「持続的な賃上げ」を実現するため、2025年実施のものづくり補助金では最低賃金に近い労働者が多い事業者に対して賃上げを促すための優遇措置が取られる見込みです。
最低賃金近辺の条件の他に、通常の賃上げノルマ要件にも若干の変更がおこなわれます。
事業再構築補助金そのものは廃止となり、その後継として「新事業進出補助金」が創設されます。
補助事業のおもな目的は事業再構築補助金に準ずる見通しであり、企業の成長・拡大を目指した新規事業への挑戦(新規性)、賃上げの促進を狙った補助金になりそうです。
内容および位置付けとしては、既存の事業再構築補助金における事業再構築指針「新市場進出」のイメージに近いと予想されます。
(出典:経済産業省)
中小企業新事業進出補助金に関する詳細な記事はこちら
省力化投資補助金については、設立当初はカタログに登録された補助対象設備がごくわずかであり、そもそも利用できる企業がきわめて稀という問題を抱えていました。
しかしながら、最近は各工業会の取り組みも活発になり、現在は続々と対象となるカテゴリーおよび登録製品が増え続けています。
カタログに登録される分野および製品が増えるほど利用しやすくなることに加えて、2025年からは一般型としてカタログ外のカスタマイズ設備や、ソフト+ハードなど個別の現場に合わせた省力化設備も対象にできることが明記されました。
(出典:経済産業省)
これにより、今までは微妙な立ち位置だった省力化投資補助金も柔軟な運用が可能になる見通しであり、今回のバージョンアップ直後の2025年公募「省力化投資補助金(一般型)」はとくに狙い目となるでしょう。
2025年から新たにスタートする補助金制度として、「中小企業成長加速化補助金」が設けられます。
本補助金では売上高100億円を目指す企業が対象となり、業績が好調な中小企業がさらに規模を拡大して地域経済を牽引するポジションを目指せるように支援。
さらなる成長に向けて設備投資額1億円超となる大胆な設備投資を目論む企業向けの補助金になります。補助金としては、最大5億円上限の補助受給が可能となります。経産省の補助金としては珍しく建物費も補助対象経費に出来ます。
(出典:経済産業省)
位置付けとしては、既存の「大規模成長投資補助金」が近くなりますが、こちらは事業規模の大きい上場会社など限られた企業しか要件を満たせませんでした。既存の「大規模成長投資補助金」は最大補助額50億円というインパクト大の補助金ですが、限られた大企業・中堅企業のみが対象でした。
そこで、より規模の小さい中小規模も対象となるように新設されたのが、中小企業成長加速化補助金となります。
中小企業成長加速化補助金に関する詳細な記事はこちら
ものづくり補助金などに比べると規模は小さくなるものの、条件が合致すれば利用しやすい補助金として、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、および事業承継・M&A補助金も継続して実施されます。
複雑だった特別枠が整理される、対象が拡大されるなどの若干の変更はありますが、大枠としては従来のままでの提供となる見通しです。
(出典:経済産業省)
IT導入補助金に関する詳しい説明記事はこちら
2025年版IT導入補助金!令和6年度補正予算で拡充されたポイントを解説!
国が実施する中小企業向け補助金制度には、その時点での国の方針や思惑が色濃く反映されています。令和6年度補正予算(2025年実施分の予算)であれば、その根本として設定された「賃上げ原資の確保」と「持続的な賃上げ」の実現が、まさにこの方針になるでしょう。
ここから伺えるのは、国が目指すのは単なる賃上げ環境の実現ではなく、あくまで成長と賃上げを両輪として回していくべきであり、補助金制度もそれを支援するものになっているという図式です。
たとえば、ものづくり補助金および新事業進出補助金(旧 事業再構築補助金)の収益納付撤廃はその最たるものでしょう。
補助金によって成長して利益が出たら、その利益をさらなる成長に回してほしいという意図がありありと伺えます。
同時に、要件として賃上げノルマを設定したり、最低賃金近辺の引き上げを設定することで、成長による利益を「持続的な」賃上げにつなげてほしいという狙いも見えてきます。
こうした意図を持った補助金制度に向き合うにあたって、経営ビューイングとしては以下のようなスタンスが重要になると考えています。
中長期的には、国としてはある程度の淘汰を前提とした競争的環境の実現と、それによる中小企業の成長を狙ってくることも考えられます。
本記事では令和6年度補正予算において決定された、2025年に実施予定となっている各種補助金の概要、および補助金制度から伺える国の方針についてお伝えしました。
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