
中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募要領が2026年8月18日に公開されました。
第8回公募では、補助上限額や基本的な補助率など大枠は第7回から維持されている一方、申請にあたって注意したい変更点があります。
なかでも重要なのが、基準年度の変更、事業場内最低賃金引き上げに係る加点、「足下の賃上げ」、給与支給額・労働生産性の判定基準の変更です。
本記事では、中小企業省力化投資補助金(一般型)の第7回・第8回公募要領を比較し、第8回で押さえておきたい変更点と申請時の注意点を解説します。
※本記事は2026年9月8日時点で公開されている第8回公募要領等に基づいて作成しています。申請の際は必ず最新の公募要領・公式サイトをご確認ください。
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業等を対象として、個々の現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築などの省力化投資を支援する補助金です。
IoT、ロボットなどのデジタル技術を活用した設備のほか、事業者の導入環境に合わせて構成された機械装置・システムなどが対象となります。
単に設備を導入するだけではなく、
などを事業計画として具体的に示す必要があります。
第8回公募のスケジュールは、2026年9月8日時点で次のとおり公表されています。
| 項目 | 第8回 |
|---|---|
| 公募開始 | 2026年8月18日 |
| 申請受付開始 | 2026年9月中旬予定 |
| 申請締切 | 2026年10月中旬予定 |
| 採択発表 | 2027年2月上旬予定 |
なお、公式サイトでは公募回は年間3~4回を予定しており、第9回については詳細が決まり次第公表するとしています。
申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。取得には一定期間を要するため、申請を検討している場合は早めに準備しておきましょう。
まず、第7回と第8回の主な違いを整理します。
| 項目 | 第7回 | 第8回 |
|---|---|---|
| 足下の賃上げ | 審査項目への明記なし | 審査項目に明記 |
| 基準年度 | 応募申請時の直近の決算期 | 補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期 |
| 労働生産性4%以上の比較 | 申請時と比較 | 基準年度と比較 |
| 1人当たり給与支給総額3.5%以上の比較 | 応募申請時の直近の決算期の給与支給総額を起点に算定 | 基準年度を起点に算定 |
| 付加価値額 | 設備投資前と比較して増加 | 基準年度と比較して増加 |
| 補助事業実施期間 | 交付決定から18か月以内(採択発表から20か月以内) | 交付決定から17か月以内(採択発表から19か月以内) |
| 事業場内最低賃金引き上げ加点 | 2025年7月→申請直近月で全国目安63円以上 | 2026年6月→申請直近月で全国目安55円以上 |
このうち、第8回の事業計画を考えるうえで特に重要なのが、「基準年度の変更」と「足下の賃上げ」の新設です。
ここから、特に重要な変更点を詳しく確認します。
第8回で最も注目したい変更の一つが、審査項目「計画面」に「足下の賃上げ」について具体的な記載が追加されたことです。
第7回の計画面では、
本事業により高い賃上げを実現する目標値が設定されており、かつその目標値の実現可能性が高い事業計画となっているか
という審査項目が設けられていました。
一方、第8回ではこの審査項目に、新たに「足下の賃上げ」についての注意書きが追加されています。
第8回公募要領では、補助事業完了後の基準年度から最終年度までの賃上げ率だけでなく、設備導入などの補助事業の完了を待たずに実施する「足下の賃上げ」も評価することが明記されました。(⇒第8回公募要項より)
つまり、第8回では、「設備導入 → 省力化 → 収益向上 → 将来的に賃上げ」という将来の計画だけではなく、
設備が導入される前・補助事業が完了する前の期間にも、企業として賃上げに取り組むことが審査上評価される仕組みになっています。
ここは第8回申請で特に注意が必要です。
第8回公募要領では、最低でも、
応募申請時の直近決算期から基準年度までの「従業員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が物価上昇率を上回る程度の賃上げ
が求められています。
さらに公募要領では、この水準の賃上げが達成されない計画について、「審査上大幅に不利になります」と明記されています。
したがって、第8回では「足下の賃上げ」は単なる参考事項ではなく、採択審査を考えるうえで重要な項目になったと考える必要があります。
ただし、公募要領では「物価上昇率を上回る程度」とされており、具体的に一律○%以上という数値は示されていません。
そのため、現時点で「○%上げれば十分」「○%なら採択される」と断定することはできません。
第8回公募要領から確認できる範囲では、応募申請時の直近決算期 → 基準年度の間の「1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が評価対象になります。
ここで重要になるのが、第8回で変更された「基準年度」の定義です。
第8回では基準年度を、「補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期」と定義しています。
つまり、足下の賃上げは「申請時点ですでに賃上げを完了していなければならない」という意味ではありません。
応募申請時の直近決算期から、設備導入などの補助事業が完了する年度までの期間に賃上げを行う計画が評価されます。
足下の賃上げについては、採択後交付決定までの間に従業員への表明が必須とされています。
さらに、補助事業期間中の賃上げ実績はモニタリングの対象となることも公募要領に明記されています。
したがって、事業計画書に数字だけを記載して終わりではなく、採択後も実際の賃上げ状況を確認されることを前提として、実現可能な計画を策定する必要があります。
第8回では、「基準年度」の定義そのものが変更されています。
第7回⇒応募申請時の直近の決算期
第8回⇒補助事業が完了した日を含む事業年度の決算期
労働生産性や1人当たり給与支給総額などの事業計画数値を考えるうえで、どの年度を起点として成長率を計算するのかが変わっています。
第7回では、応募申請時の直近決算書をベースに労働生産性を算定していました。
第8回では、補助事業が完了した日を含む事業年度を基準年度として、効果報告時の労働生産性等との比較を行います。
さらに、この変更によって、応募申請時の直近決算期 → 基準年度という期間が生まれ、この期間に行う賃上げが前述した「足下の賃上げ」として評価される仕組みになっています。
省力化投資補助金では、3~5年の事業計画期間において、労働生産性を年平均成長率4.0%以上向上させることが基本要件です。
この「4.0%以上」という数値自体は第7回から変わっていません。
変更されたのは比較の起点です。
第7回では、申請時と比較して年平均4.0%以上でした。
第8回では、基準年度と比較して年平均4.0%以上となりました。
前述のとおり、第8回の基準年度は「補助事業が完了した日を含む事業年度」です。
そのため、第8回では、設備導入が完了した年度を基準として、その後の3~5年間で労働生産性をどのように高めるのかを計画することになります。
基本要件である「1人当たり給与支給総額」についても、考え方が変わっています。
求められる成長率そのものは、年平均成長率3.5%以上で、第7回から変更ありません。
一方、第7回では、効果報告時の1人当たり給与支給総額を「応募申請時の1人当たり給与支給総額」と比較して年平均成長率を算出する仕組みでした。
第8回では、基準年度の1人当たり給与支給総額との比較に変更されています。
つまり、第8回では賃上げについて、
①応募申請時の直近決算期 → 基準年度:「足下の賃上げ」
②基準年度 → 事業計画最終年度:基本要件の年平均3.5%以上
という2つの期間を分けて考える必要があります。
この点は、第8回で事業計画を策定するうえで非常に重要な変更です。
付加価値額についても変更されています。
第7回では、「設備投資前と比較して付加価値額が増加する事業計画」とされていました。
第8回では、「基準年度と比較して付加価値額が増加する事業計画」へ変更されています。
第8回では、労働生産性、1人当たり給与支給総額、付加価値額などについて、補助事業完了年度を「基準年度」として、その後の成長を計画する考え方がより明確になったと整理できます。
補助事業実施期間も変更されています。
| 第7回 | 第8回 | |
|---|---|---|
| 交付決定から | 18か月以内 | 17か月以内 |
| 採択発表から | 20か月以内 | 19か月以内 |
それぞれ1か月短縮されています。
大型設備やオーダーメイド設備では、発注から製造、納品、据付、検収までに長期間を要する場合があります。設備メーカー等と納期を確認し、第8回の補助事業実施期間内に事業を完了できるか確認しておきましょう。
足下の賃上げとは別に、第8回では「事業場内最低賃金引き上げに係る加点」の基準も変更されています。
第7回⇒2025年7月と応募申請直近月を比較し、「全国目安で示された額(63円)」以上
第8回⇒2026年6月と応募申請直近月を比較し、「全国目安で示された額(55円)」以上
ここで注意したいのは、単純に「63円→55円へ緩和された」とは言い切れない点です。必要な引上げ額だけでなく、比較する基準月も2025年7月から2026年6月へ変更されています。
また、この加点は「足下の賃上げ」とは別の評価項目です。
一方、第8回でも、補助金の基本的な枠組みは維持されています。
補助上限額は次のとおりです。
| 従業員数 | 通常 | 大幅賃上げ特例 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率は、中小企業が原則1/2、小規模企業者・小規模事業者および再生事業者が2/3です。
また、基本要件として、
などが設定されています。
ただし、前述したとおり、第8回ではこれらの計画数値を考える際の基準年度が変更されている点には注意が必要です。
第8回の変更を踏まえると、これまで以上に賃上げ計画を早い段階から検討する必要があります。
特に重要なのが、「補助事業が終わった後に賃上げすればよい」と考えないことです。
第8回では、補助事業完了後の賃上げだけでなく、補助事業の完了を待たずに行う「足下の賃上げ」も審査対象となりました。
一方で、公募要領は「物価上昇率を上回る程度」としており、具体的な一律の賃上げ率までは示していません。
そのため、現時点では、「○%に設定すれば採択上有利」といった具体的な数値を公式資料から判断することはできません。
重要なのは、自社の収益状況や人件費、設備投資による省力化効果、今後の付加価値向上などを踏まえて、実現可能性のある賃上げ計画を策定することです。
さらに第8回では、足下の賃上げについて採択後から交付決定までの間に従業員への表明が必要で、補助事業期間中の実績もモニタリングされます。
無理に高い数値を設定するのではなく、実際に実行できる計画とすることが重要でしょう。
省力化投資補助金では、設備によって単純に作業時間を削減するだけではなく、省力化によって生み出された時間・人員をどのように活用するかも審査されます。
例えば、
人手不足・ボトルネックの発生
↓
設備導入による省力化
↓
余剰時間・人員を高付加価値業務へ再配置
↓
生産能力・受注能力の向上
↓
売上・付加価値額の増加
↓
労働生産性向上
↓
持続的な賃上げ
というように、省力化投資と企業全体の成長をつなげることが重要です。
第8回公募要領でも、省力化された時間や労働力を高付加価値業務へ振り向け、賃上げにつながるような会社全体のリソース最適化が審査項目として示されています。
そこに今回、新たに「足下の賃上げ」の評価が明記されたため、将来の成長だけでなく、設備導入までの期間を含めた賃上げの道筋まで考える必要があります。
経営ビューイングでは認定支援機関として豊富な実績とノウハウで、事業計画策定から申請手続き、採択後のアフターサポートまで一貫した支援を行なっています。
ご相談も受け付けておりますのでお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回では、補助上限額や補助率など制度の基本的な枠組みは大きく変わっていません。
一方、事業計画の策定・審査については重要な変更があります。
特に押さえておきたいのが、
という点です。
第8回では、設備導入後の成果だけでなく、設備導入・補助事業完了までの期間を含め、どのように賃上げを実現していくのかについても事業計画の段階から検討する必要があります。
経営ビューイングでは認定支援機関として豊富な実績とノウハウで、事業計画策定から申請手続き、採択後のアフターサポートまで一貫した支援を行なっています。
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