
「100億宣言」に続き、中小企業の新たな成長支援策として注目されているのが、いわゆる「10億宣言」です。
日本経済新聞は2026年7月、中小企業庁が2027年度から、売上高10億円を目指す企業への支援を手厚くする方針であると報じました。
一方、経済産業省も2026年6月に公表した「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」の中で、これまでの「100億企業」の創出支援に加え、成長志向の中小企業の裾野を広げる新たな仕組みを構築する方針を示しています。
具体的には、「売上高10億円」を目指す企業や「高収益型」を目指す企業を創出し、経営改革に本気で取り組む企業へ政策支援を集中させる考えです。
ただし、2026年8月時点では「10億宣言」という名称の制度について、100億宣言のような公表要領や申請要領は確認できません。
そこで本記事では、経済産業省・中小企業庁が公表している公式資料と日本経済新聞の報道をもとに、現時点で分かっている「10億宣言」の方向性、100億宣言との違い、対象となる可能性がある企業、今後の補助金との関係について解説します。
※本記事は2026年8月時点の情報です。「10億宣言」については正式な制度内容が公表されていないため、今後変更される可能性があります。
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「10億宣言」とは、売上高10億円規模への成長を目指す中小企業を重点的に支援する、新たな仕組みとして報道されているものです。
2026年7月の日本経済新聞では、中小企業庁が2027年度から、売上高10億円を目指す企業に対して補助金の上限を引き上げる方針であると報じられています。

また、経営者が売上高10億円という目標を掲げる「10億宣言」を行い、その実現に向けた事業計画の策定には地方銀行や信用金庫などの金融機関も関与する方向であるとされています。
一方で、経済産業省が2026年6月24日に公表した「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」では、「10億宣言」という名称こそ使用されていませんが、そのベースと考えられる政策方針が明確に示されています。
同戦略では、これまで進めてきた中堅企業・100億企業の創出に加えて、
「成長志向の中小企業の裾野を広げる新たなメカニズム」
を構築するとしています。
その対象として、
の2つが明記されています。
つまり、国が「売上高10億円程度まで成長したい企業」を新たな重点支援層として位置付けようとしていること自体は、公式資料から確認できます。
ただし、現時点では「10億宣言」が正式な制度名称になるのかも含め、詳細は確定していません。
背景には、中小企業政策において「成長志向の企業を増やす」という考え方が強まっていることがあります。
経済産業省は「稼ぐ力」強化戦略において、人口減少による労働供給制約が進む中では、「人も中小企業も数よりも質」が重要であるとの考えを示しています。
現状維持ではなく、
などに取り組む中堅・中小企業を支援し、「稼ぐ力」の強化と賃上げの好循環につなげることを目指しています。
これまで国は、その代表的な取組として「100億企業」の創出を進めてきました。
2025年には「100億宣言」がスタートし、売上高10億円以上100億円未満の中小企業が、将来の売上高100億円を目指す成長戦略を宣言できるようになりました。
しかし、売上高10億円未満の企業は100億宣言の対象にはなりません。
経済産業省の資料では、売上高1億円~10億円の企業は約60万社、売上高10億円~100億円の企業は約9万社とされています。
そこで、100億円を目指す企業だけでなく、その手前に位置する企業にも成長志向を広げていくため、「売上高10億円」という一つの成長目標が示されていると考えられます。
現時点で確認できる情報を整理すると、両者には次のような違いがあります。
| 項目 | 100億宣言 | いわゆる「10億宣言」 |
|---|---|---|
| 目標 | 売上高100億円 | 売上高10億円等 |
| 主な対象 | 売上高10億円以上100億円未満 | 売上高10億円未満の成長志向企業が中心になるとみられる |
| 現在の売上高要件 | 10億円以上100億円未満 | 正式要件は未公表 |
| 制度状況 | 2025年から実施済み | 検討・制度設計段階 |
| 公式の公表要領 | あり | 現時点で確認できず |
| 宣言内容 | 成長目標・課題・具体的措置・実施体制・経営者のコミットメント等 | 詳細未公表 |
| 金融機関との関係 | 支援制度によって金融機関のコミットメント等を確認 | メインバンクによる伴走支援を重視する方向 |
| 関連する補助金 | 中小企業成長加速化補助金等 | 補助金支援の拡充が報道されているが詳細未確定 |
注意したいのは、「100億宣言をそのまま10分の1にした制度」と決まっているわけではないことです。
100億宣言にはすでに正式な公表要領や申請様式があり、対象となる売上高も明確に決められています。
一方、いわゆる10億宣言については、具体的な制度設計が公表されていません。
一部の報道や民間の解説では、「売上高1億円以上10億円未満」が10億宣言の対象になるとの情報も出ています。
実際に、経済産業省の「稼ぐ力」強化戦略の概要資料には、
「成長志向の中小企業の裾野を広げる新たなメカニズム(①売上1~10億円の企業、②小規模事業者を対象)の構築」
との記載があります。
そのため、売上高1億円~10億円の企業が新たな成長支援の主要なターゲットになっていることは、公式資料から確認できます。
ただし、
「10億宣言の申請要件が売上高1億円以上10億円未満になる」と正式決定したわけではありません。
100億宣言では「売上高10億円以上100億円未満」と明確な申請要件がありますが、10億宣言について同様の正式な公表要領は現時点では確認できません。
今回の政策で注目したいのが、「売上高10億円」だけを唯一のゴールとしていない点です。
経済産業省の「稼ぐ力」強化戦略では、
①売上規模を拡大し、例えば売上高10億円を目指す成長志向の中小企業
に加えて、
②高収益型を目指す成長志向の中小企業
も創出していく方針が示されています。
つまり、単純に企業規模を大きくするだけではなく、付加価値や収益力を高める企業も支援対象として想定されています。
人手不足が深刻化する中、従業員数を増やしながら売上だけを拡大するのではなく、生産性向上や高付加価値化によって「稼ぐ力」を高めることも重要視されていると読み取れます。
10億円規模への成長支援で、もう一つ注目したいのが金融機関との連携です。
経済産業省の公式戦略では、売上高10億円や高収益型を目指す企業について、
経営者が経営改革に本気で取り組み、メインバンクも本気で伴走支援を実施する中小企業を選定し、政策支援を集中投下するという方向性が示されています。
さらに、まず経営課題に対応し、経営管理能力の高度化や経営改革を行うことで、大胆な成長投資ができる経営基盤を整えていくとしています。
単に「10億円を目指します」と宣言するだけではなく、経営者の成長意思+実現可能な経営計画+金融機関の伴走を組み合わせて企業を成長させる仕組みが検討されていることが分かります。
日本経済新聞の報道でも、10億円の実現に向けた事業計画づくりに地方銀行や信用金庫などの金融機関が関与し、計画の実効性を高める方向であるとされています。
ただし、金融機関からどのような確認書や支援表明を取得する必要があるのかなど、具体的な制度要件はまだ公表されていません。
中小企業にとって最も気になるのが、補助金との関係ではないでしょうか。
日本経済新聞は、中小企業庁が2027年度から売上高10億円を目指す企業について、補助金の上限を引き上げる方針であると報じています。
一方、経済産業省の「稼ぐ力」強化戦略でも、成長志向の企業に対して政策支援を集中させる方針が示されています。
しかし、2026年8月時点では、10億宣言企業向けの補助制度について正式な公募要領等は公表されていません。
そのため、
といった点については、現時点では確定情報として記載できません。
日本経済新聞によると「今冬にも要綱を公表し27年度から受け付けを始める」とされており、2027年度予算や補正予算、各補助金の公募要領等によって具体化される可能性があるため、引き続き中小企業庁・経済産業省の発表を確認する必要があります。
10億円規模の企業への新たな支援は、100億宣言とは別々の政策として見るより、中小企業の成長段階に応じた一連の政策として見ると分かりやすくなります。
国はすでに、売上高10億円以上100億円未満の中小企業について「100億宣言」を設けています。
さらに、100億宣言企業が利用できる代表的な支援策として「中小企業成長加速化補助金」があり、補助上限額5億円、補助率1/2で大型投資を支援しています。
一方、その手前となる売上高1億円~10億円規模の企業は、経済産業省資料では約60万社存在しており、下図のように、多くの中小企業は売上が横ばいであるのが現状です。

今回の「稼ぐ力」強化戦略では、この層を含めて成長志向の企業を増やす仕組みを構築する方針が明確に打ち出されました。
現在の規模に応じた一律的な中小企業支援だけではなく、次の成長ステージを目指す企業に対して、投資・金融・経営面の支援を組み合わせて成長を後押しするという方向性が強まっていることが分かります。
制度の詳細が決まっていない以上、現時点で具体的な準備を始めることはできませんが、一方で、経済産業省が示している政策の方向性から考えると、自社の成長戦略を整理しておくなどの事前準備は可能です。
例えば、
特に今回の公式戦略では、経営者による経営改革だけでなく、メインバンクによる伴走支援も明確に打ち出されています。
そのため、設備投資だけを先に考えるのではなく、「どの市場で、どのように付加価値を高め、そのために何へ投資し、どのように資金を調達して成長するのか」という一連の成長ストーリーを整理することが重要になると考えられます。
「10億宣言」は、100億宣言よりも幅広い中小企業を対象とした、新たな成長支援の仕組みとして注目されています。
100億宣言では「宣言」と大型補助金、税制、金融・経営支援などが連動する仕組みがすでに構築されています。
今後、より小規模な企業にも同様に成長を後押しする仕組みが整備されれば、売上高数億円規模の企業にとって大きな支援策となる可能性があります。
詳細が公表され次第、本記事でも最新情報を更新していきます。
経営ビューイングでは認定支援機関として豊富な実績とノウハウで、事業計画策定から申請手続き、採択後のアフターサポートまで一貫した支援を行なっています。
ご相談も受け付けておりますのでお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
参考資料